- 営業用トラックの積載効率は約 40%。国は令和 10 年度までに 44% への引き上げを目標に掲げ、2026 年 4 月には物流効率化法の対応が本格化した (国土交通省)。
- 中小卸の配送ルートと積み合わせ判断は、ベテランドライバーの頭の中にしかないことが多く、共同配送を検討しても得意先ごとの納品条件の違いで頓挫しやすい。
- 解決は 「配送ルートそのものは変えず、判断材料だけを画面に書き写す」 段階的アプローチ。積み合わせの余地を見える化してから、負担の少ない範囲で試す。
「うちの配送ルートは、ベテランドライバーが長年の経験で組んでいるので、本人がいないと誰も分からないんです」── 中小卸の経営者や配送担当者から、こうした話を伺うことが珍しくありません。得意先ごとの納品時間の指定、荷降ろし条件、道路事情まで含めた順路の組み方は、マニュアル化されないまま個人の頭の中に蓄積されています。
この記事では、積載効率や物流効率化法をめぐる最新の統計・制度動向を確認した上で、配送ルートと積み合わせの判断がベテラン任せになっている中小卸の典型的な悩みと、既存の配送運用を大きく変えずに判断材料だけを画面で共有していく現実的な進め方を解説します。
数字で見る、配送効率と物流効率化法の現状
- 営業用トラックの積載効率: 自動車輸送統計をもとに、国土交通省は現状を約 40% と把握。荷台の半分以上が空いた状態で走行しているトラックが多いことを示す (国土交通省 自動車輸送統計)。
- 積載効率の目標値: 改正物流効率化法の判断基準として、令和 10 年度までに車両全体の積載効率を 44% へ引き上げる目標が掲げられている (国土交通省 物流効率化法について)。
- 物流効率化法の段階施行: 2025 年 4 月に全荷主への努力義務が施行され、2026 年 4 月からは一定規模以上の「特定事業者」に中長期計画の作成・報告、物流統括管理者の選任などの義務が本格化した (国土交通省 物流効率化法について)。
- トラック運送事業者の構成: 事業者の 99.9% が資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下の中小企業 (国土交通省中国運輸局 資料)。配送を担う側も委託する側も、大半が中小規模という構造。
- 中小企業の対応状況: 物流 2024 年問題を中小企業の 72% が認知する一方、共同配送など具体的な対策に取り組んでいるのは 25.5% にとどまり、46.5% が「何をすればよいか分からない」と回答 (日本商工会議所 調査、経済産業省審議会資料)。
- 共同輸配送支援策: 国土交通省は 2026 年 6 月、共同輸配送や帰り荷確保のための物流データ連携を支援する補助金の 2 次公募を開始した (国土交通省 報道発表)。
積載効率 40% という数字は、裏を返せば「積み合わせや共同配送の余地がまだ大きい」ことも意味します。ただし制度と補助金が整っても、実際に積み合わせを判断する材料 ── どの得意先の荷物なら一緒に積めるか、時間指定が競合しないか ── が画面や台帳ではなく、ベテランドライバーの頭の中にしかなければ、対策は進みません。
業種別シナリオ ── 配送ルートがベテラン任せになる現場
以下は複数のご相談を再構成した代表シナリオであり、実在の特定企業の事例ではありません。
シナリオ 1: 青果卸 (早朝配送、多店舗小口配送)
飲食店・小規模スーパー 40〜50 軒への早朝配送が中心。各店の開店時間・搬入口の場所・荷降ろしの優先順位まで含めた順路は、20 年選手のドライバー 2 名の経験に依存。新人ドライバーが担当を代わると、同じ台数を回るのに 1.5 倍の時間がかかってしまう。
シナリオ 2: 飲料卸 (重量物、季節変動配送)
飲料は重量物のため積載量の制約が大きく、夏場の繁忙期は同じ台数でも積み合わせの組み方次第で必要車両数が変わる。ベテラン配車担当者が「今日はこの順番で積めば入る」と感覚で判断しており、担当者が休むと配車が組めず外部委託の急な手配が発生する。
シナリオ 3: 地域卸 (複数エリア、共同配送の検討)
近隣の同業他社と共同配送を検討したものの、得意先ごとに納品時間指定・検品条件・請求単位がバラバラで、「どの荷物なら一緒に積めるか」を整理する材料がなく話が進まない。結局、各社が個別にトラックを走らせる従来通りの運用が続いている。
解決の核 ── 配送ルートを変えずに判断材料だけ画面で共有する
配送ルートと積み合わせの属人化に対して、いきなり配車最適化システムを導入しようとすると、ベテランドライバーの経験値をシステムの入力項目に翻訳しきれず、現場が回らなくなるリスクがあります。
「現場を変えない開発」のアプローチでは、まずドライバーや配車担当者が普段どう順路を組み、何を基準に積み合わせを判断しているかを観察・記録することから始めます。得意先ごとの納品時間指定、荷降ろし条件、積載量の目安を 1 つの画面に集約し、配送そのものは今まで通りベテランに任せたまま、判断材料だけを「見える状態」にします。
この段階では入力の手間を増やさないことが最優先です。観察した情報を画面に書き写すだけで、ドライバーの負担はゼロに近い状態を保ちます。判断材料が見える化されて初めて、どの得意先の荷物なら積み合わせできそうか、共同配送の相手先と条件を突き合わせられるかを、経営者や配車担当者が検討できるようになります。
物流効率化法が求める中長期計画や定期報告も、まずは自社の配送実態を数字と画面で把握できていることが前提になります。ベテラン依存を残したまま「見える化」を先に進めることが、結果として制度対応の土台にもなります。
既製品で足りない理由
- 配車最適化 SaaS は全条件のシステム入力が前提: 得意先ごとの時間指定の融通や、検品条件の細かな違いをすべてマスタ登録する手間が発生し、中小卸の実務に合わない。
- 大手物流向けの規模設計: 車両台数・拠点数が多い前提のシステムが多く、数台〜十数台規模の中小卸では投資回収が見合わない。
- 共同配送マッチングは条件の標準化が前提: 異業種・他社との共同配送プラットフォームは、荷姿や納品条件の標準化を求めるものが多く、中小卸単独では取引先との合意形成が難しい。
- ベテランの経験的な判断をデータ化する機能がない: 既製品は新規データの入力を前提とし、すでにベテランの頭の中にある「経験的な順路の組み方」を観察してそのまま画面に写し取る機能を持たない。
取り組み方の 3 ステップ
- ステップ 1 現状観察 (2〜4 週間): ドライバー・配車担当者に同行やヒアリングを行い、得意先ごとの時間指定・荷降ろし条件・積載量の目安を記録する。配送運用そのものは変更しない。
- ステップ 2 判断画面の追加 (1〜2 ヶ月): 得意先別の配送条件と積載量の目安を 1 画面に集約し、積み合わせの候補が見える状態にする。入力は最小限にとどめ、観察と記録が中心。
- ステップ 3 段階的な積み合わせ導入 (2〜6 ヶ月): 見える化した情報をもとに、負担の少ない得意先や便から積み合わせ・共同配送を試験導入。ドライバーの合意を得ながら対象範囲を広げていく。
まとめ
配送ルートと積み合わせの属人化を解く本質は、配車システムの高度さではなく、ベテランの経験値を「見える状態」にする順序にあります。配送運用そのものを一気に変えようとせず、まず判断材料を画面に書き写し、積み合わせの余地が見えてから段階的に試す。この順序が、物流効率化法への対応を「制度に追われる対応」ではなく、「自社の配送実態を把握した上での前向きな取り組み」に変える鍵になります。
引用元
- 国土交通省「自動車輸送統計」 — mlit.go.jp/k-toukei/jidousya.html
- 国土交通省「物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)」 — mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000034.html
- 国土交通省中国運輸局「中小・零細実運送業者の実情」 — wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/content/000041561.pdf
- 日本商工会議所調査 (経済産業省審議会提出資料)「中小企業における物流効率化の取組み等について」 — meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/pdf/002_03_02.pdf
- 国土交通省 報道発表「中小物流事業者の労働生産性向上事業費補助金(共同輸配送や帰り荷確保等のための物流データ連携促進支援事業)の2次公募開始について」 — mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_001023.html
最初の 60〜90 分のヒアリングから、整理メモと画面ラフ・松竹梅プランのお渡しまで、費用は発生しません。
「ベテランドライバーが休むと配車が組めない」「共同配送を検討したいが条件の整理が進まない」「物流効率化法への対応を何から始めればいいか分からない」段階で大丈夫です。