導入事例 ── 精肉卸
手書きと勘に頼っていた在庫・原価を、 現場の運用はそのままに、画面へ。
鳥取和牛を扱う精肉卸「株式会社やまのおかげ屋」様 (鳥取県倉吉市) の在庫管理を、 既存の販売管理システムには手を入れず、在庫と原価だけを画面化しました。 ※ 本事例はお客様の許諾を得て掲載しています。社内で用いた開発手段や技術的な詳細は掲載していません。
- お客様
- 株式会社やまのおかげ屋 様
- 業種
- 精肉卸 (鳥取和牛・ハイブランド和牛)
- 所在地
- 鳥取県倉吉市
- ご相談の目的
- 入力の手間削減 / 在庫の可視化 / 利益 (粗利) の可視化
ご相談のきっかけ ── 「数えられない在庫」と「見えない粗利」
精肉卸の在庫は、同じ部位でも 1 塊ごとに重量が違う「不定貫」です。個数では数えられず、塊ひとつずつを重量で管理しないと、在庫も原価も合いません。ここに、いくつもの手作業が積み重なっていました。
- 在庫と原価計算が手書き・Excel に残り、いま何がどれだけあるかがその場で分からない
- 一頭仕入・セット仕入の 1 つの金額を、多数の部位に配分する原価按分が複雑で、ベテランの勘に依存。日々の粗利が見えない
- 仕入先ごとに様式が違う納品書と、肉ラベルの転記に手間がかかり、書き間違いも起きる
- 同じ部位を仕入先・地域で別名で呼ぶ「呼びゆれ」があり、ラベルの品名が商品台帳と合わせにくい
- 在庫と既存の販売管理システムが分かれ、同じ情報を二重に入力しがち
- 賞味期限切れ・品質劣化による廃棄を、鮮度管理と理由記録で抑えたい
進め方 ── 作る前に、画面と流れを一緒に確認
いきなり作り始めるのではなく、実装の前に、現場で回るかどうかを画面で確認していただく順序で進めました。「作ってから思っていたのと違った」を防ぐためです。
- 業務の整理 ── 現状の流れと理想の流れを図にして、業務担当・現場窓口・決裁者に「この流れで回るか」を確認
- やることの確定 ── 何を作り、何は作らないか (例: 100% 自動読み取りは目視前提、自動発注は対象外) を先に合意
- 画面イメージ・操作モック ── 実装前に画面と操作を触れる形でお見せし、現場が確認・承認
- 段階リリース ── 初回版 → 改善版 → 最終版と、リリースを重ねながら現場に合わせて仕上げ
開発中も毎週の定例で認識を合わせ、納品時にはユーザー向け・管理者向けのマニュアルまでお渡しして、引き渡し後はお客様が自走で運用できる状態にしました。
できるようになったこと
手書き・二重入力・勘に頼る原価計算を、タブレットと PC で完結する在庫管理に置き換えました。
納品書・肉ラベルのカメラ読み取り
仕入先ごとに様式が違う納品書と肉ラベルを、カメラで撮って自動でデータ化。1 枚に複数のラベルが写っていてもまとめて取り込み、読み取り結果は画面でそのまま手直しできます。品名は自動で正規化して台帳の候補を提示し、最終の紐付けは人が選ぶ設計にしました。
原価の自動計算
一頭・セット仕入は部位ごとの原価表にもとづき「重量 × 原単価」で自動按分、単品はそのまま計算。塊ごとの原価が自動で算出され、勘に頼っていた配分がなくなりました。
不定貫の在庫管理
肉ラベル 1 枚を 1 在庫として、重量・原価・産地・保管場所・状態 (良品/引当済/出荷済/廃棄) を管理。部位・商品名・保管場所・入庫日で検索でき、冷蔵/冷凍の温度帯と棚の位置も分かります。
出荷 (引当 → 検品 → 確定 → 連携)
得意先を指定して在庫を引き当て、検品して出荷を確定。既存の販売管理システムへ渡すデータを出力し、二重に出さないための管理も付けました。
ダッシュボードで見える化
冷蔵/冷凍の在庫重量、入荷予定、未完了の出荷、賞味期限が近い在庫、仕入合計を一目で確認。日々の粗利や産地別の在庫も画面で見られます。
廃棄の記録と権限管理
廃棄は理由とともに、その時点の在庫内容を記録して後から追えるように。担当の役割 (管理者・仕入・営業・ピッキング) に応じて使える機能を分けました。
この事例の肝 ── 「現場を変えない」を徹底
受注・売上・請求は、これまで通り既存の販売管理システムに残しました。新しい仕組みが担当するのは、在庫と原価だけです。既存側の在庫機能はオフにして、二重管理を避けています。
部位の呼び名も、仕入先ごとに違う納品書の様式も、「出荷を確定してから伝票を出す」という既存の順序も、やり方を変えずにそのまま受け止める設計にしました。業務のやり方を変えさせるのではなく、道具だけを足す ── これが「現場を変えない開発」の実際の姿です。
導入後
手書きと勘に頼っていた在庫・原価計算が、誰でも同じ操作で回せる画面に置き換わりました。リアルタイムな在庫把握と、日々の粗利の見える化を実現する仕組みを構築し、マニュアル整備によって引き渡し後はお客様が自走で運用を開始しています。納品後も、継続して運用保守をご一緒しています。
精肉卸の在庫・加工・原価に固有の困り事は、業種別の解説もご用意しています ── 精肉卸の現場と業務システム。
「うちの在庫と原価も、今のやり方のままで見えるようにできるか」
段階で言えば「まだ整理できていない」状態で構いません。最初の 60〜90 分のヒアリングから、整理メモと画面ラフ・松竹梅プランのお渡しまで、費用は発生しません。