この記事の要点
  • 食品卸売業の食品ロスは 年間 9 万トン、事業系食品ロス全体の約 4% (農林水産省 2024 年度推計)。量としては小さいが、業種別の再生利用等実施率の目標は 75% と高水準に設定されている。
  • 落とし穴は、食品ロス削減推進法・食品リサイクル法が求める 「継続的な計量」 を、月次の会計処理や紙のメモで済ませようとして、廃棄理由別・拠点別の実態把握が追いつかないこと。
  • 解決は 既存の出荷・廃棄伝票に手を加えず、理由と重量だけを画面で拾う 仕組み。入力を増やさず、集計の粒度だけを変えるアプローチ。

「食品ロス削減法は聞いたことはあるが、うちのような卸売業にはあまり関係ないと思っていた」── 中小の食品卸を経営する方から、こうした話を伺うことがあります。事業系食品ロスの中で食品卸売業が占める割合は 4% 程度と、食品製造業や外食産業に比べて小さく見えるのも事実です。ただし、食品リサイクル法が業種別に定める再生利用等実施率の目標では、食品卸売業は他業種より高い水準を求められており、取引先から実績データの提示を求められる場面も増えています。

この記事では、農林水産省・環境省・消費者庁が公表している最新の食品ロス統計と制度の現状を確認した上で、法律が求める記録・計量の実務を、既存の業務を大きく変えずに満たしていく進め方を解説します。

数字で見る、食品ロス削減法と卸売業の現状

これらの数字が示すのは、食品卸売業はロスの絶対量では小さいが、法制度上の期待水準は決して低くないという構図です。目標達成が目前に迫っているからこそ、これまで「なんとなくの実感」で管理してきた廃棄・返品の数字を、根拠のある形で示せるかどうかが問われる局面に入っています。

業種別シナリオ ── 記録が現場に降りてこない

シナリオ 1: 青果卸 (規格外品・傷み品の計量)

入荷時に規格外や傷みで弾いた青果は、仕入台帳の余白に手書きでメモするだけ。月末にまとめて「廃棄」として金額計上するが、重量ベースの数字は誰も残していない。取引先から再生利用等実施率の実績を尋ねられても、飼料・堆肥化に回した分と単純廃棄した分の区別すらつかない状態。

シナリオ 2: 食品卸 (日配品・加工食品)

賞味期限切れによる返品と、発注過多による自社発生分が、どちらも「返品・廃棄」の一勘定にまとめられている。発生原因別の内訳が経理データに残らないため、削減の取組がどこに効いているかを社内でも説明できず、法が求める「発生抑制の取組状況」の報告様式に落とし込む作業が、担当者の手作業による再集計になっている。

シナリオ 3: 精肉卸 (欠品ペナルティ回避のための過剰在庫)

得意先からの欠品ペナルティを避けるため、加工実績を多めに見積もって仕込む慣行が続いている。結果として売れ残りが恒常的に発生しているが、「欠品回避のための計画的な過剰生産」と「見込み違いによる廃棄」が同じ廃棄伝票に混在し、原因分析につながる粒度でデータが残っていない。

いずれも、代表的なご相談内容を再構成した典型シナリオです。共通しているのは、廃棄や返品自体は発生しているが、「なぜ・どれだけ」を後から追える形で記録されていないという点です。

解決の核 ── 排出量の見える化を業務の一部にする

食品ロス削減推進法・食品リサイクル法への対応で最初に検討すべきは、新しい計量システムの導入ではありません。いま現場で書いている出荷伝票・廃棄伝票・返品伝票に、理由コードと重量の欄を追加するだけにとどめることです。

具体的には:

このアプローチのポイントは、現場の入力負担を増やさずに、集計の粒度だけを変えることです。理由コードの追加は数秒の操作で済むよう設計し、「記録すること自体が負担になって形骸化する」事態を避けます。

既製品で足りない理由

取り組み方の 3 ステップ

  1. 現状把握 (2〜4 週間): 現在の出荷・廃棄・返品伝票にどんな項目があるか、どの粒度で記録されているかを確認。法が求める「発生抑制」「再生利用」の区分にどこまで対応できているかを棚卸しする。
  2. 記録画面の追加 (1〜2 ヶ月): 既存の入力フローに理由コードと重量欄を追加する程度の最小変更にとどめ、月次・年次の自動集計を画面で確認できるようにする。
  3. 報告・活用の定着 (継続): 食品リサイクル法の定期報告や社内の削減目標の進捗を画面で確認できる状態にし、取引先への説明資料としても使えるようにしていく。

まとめ

食品ロス削減法・食品リサイクル法への対応の本質は、新しいシステムを導入することではなく、いまある伝票の記録の粒度を、あとから説明できるレベルまで少しだけ細かくすることにあります。食品卸売業のロス量は事業系全体の 4% と小さくても、再生利用等実施率の目標水準は決して低くありません。既存の業務を変えずに、理由と重量を拾えるようにするところから始めることが、法対応と現場負担の両立への最短ルートです。

引用元

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